NASAが総額1億ドル以上を投じていた。
全てが計画どおりに見えた。
1999年9月30日、早朝、世界の関係者が息をこらしていた。
宇宙船から、無事に火星周回の軌道に乗ったことを告げる信号が送られてくるはずだった。
すると突然、送信機からの信号が弱まり、消えた。
どうやら、予定では火星から150キロで静止するはずだったのが、60キロ圏内まで接近して、そのまま火星に突入したらしいことが分かった。
この事故をNASAが分析した。
その調査の結果、打ち上げ用ソフトの開発は縦割りで進められ、誰ひとりミッションの全貌をとらえていなかったと判明した。
信じがたいことに、あるチームはメートル法に従って「キロメートル」「キログラム」を、別のチームは「マイル」「ポンド」を用いる、といった有様だったのだ。
世界に冠たる頭脳集団が、あきれるほど、愚かしい失敗をする。
こうしたことが、なぜ起きたのだろうか?
ビジネスの世界でも見ることがある。
組織が病んでいると知りながら目をそらす、仕方がないと開き直る、対処せずに逃げ回る、といった姿勢は今こそ、返上すべきではないだろうか。
そもそも、組織の聡明さ(知能)や組織の知性とは何か?
どのようにすればその存在に気づき、守り育て、開花させることができるのか?
確かに組織では、愚かしさに比べて聡明さに接する機会は少ない。
しかし、重要なのは、多くの人が集まればより大きな聡明さを手にできる、実際にそのような事例がある、という事実なのだ。
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